特許法が保護対象とする「物」には、装置等の有体物だけではなく、「プログラム等」の無体物も含まれます(特許法第2条第3項)。 また、特許法では、「プログラム等」を「プログラムその他の電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの」と定義しています(特許法第2条第4項)。
「データ構造」や「構造を有するデータ」は、プログラムに準ずるものと解釈されており、特許庁の審査基準には、「データ構造」や「構造を有するデータ」が特許法の保護対象になることが明記されています。
なお、特許庁の審査基準では、「データ構造」を「データ要素間の相互関係で表される、データの有する論理的構造をいう。」と定義しています。
一方、「プログラム言語」や「プログラムリスト」は、特許法上の発明ではない(発明該当性を満たさない)と解釈されており、特許庁の審査基準には、「プログラム言語」や「プログラムリスト」が特許法の保護対象にならないことが明記されています。
なお、特許庁の審査基準では、「プログラムリスト」を「プログラムの、紙への印刷、画面への表示などによる提示そのものをいう。」と定義しています。
発明の実施にソフトウェアを必要とする発明を「ソフトウェア関連発明」といいます。 「ソフトウェア関連発明」も、発明該当性を満たす必要がある点では、他の発明と同様です。
しかしながら、「ソフトウェア関連発明」は、発明該当性の判断の手順が少し異なっており、「ソフトウェア」が発明該当性を満たすか否かの判断においては、審査官は、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されているか否か」を判断し、当該要件を満たすものだけが特許法上の「発明」に該当します。
上述の通り、「データ構造」や「構造を有するデータ」は、プログラムに準ずるもの、すなわち、ソフトウェアと解釈されます。このため、「データ構造」や「構造を有するデータ」についても、「ソフトウェア」の判断と同様に、審査官は、「データの有する構造が規定する情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されているか否か」を判断し、当該要件を満たすものだけが特許法上の「発明」に該当します。
それでは、
は、特許法上の「発明」に該当するでしょうか?
このデータ構造Aは、本体ID、画像データ及び次コンテンツIDという、コンテンツデータが含むデータ要素の内容を定義したものにすぎず、人為的な取決めに止まるものですから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、特許法上の「発明」に該当しません。
それでは、
は、どうでしょうか?
このデータ構造Bは、「前記画像データの前記表示部による表示後、前記他のコンテンツデータを前記制御部が前記記憶部から取得する処理に用いられる」との記載から、コンテンツデータに含まれる画像データの表示後、次に表示される画像データを含む他のコンテンツデータを記憶部から取得するという、コンピュータによる情報処理を可能とするデータ構造であり、当該データ構造は、コンピュータによる情報処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有するものですから、プログラムに準ずるデータ構造に該当します。
そして、画像の順次表示という使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が、ソフトウエア(プログラムに準ずるデータ構造)とハードウエア資源(コンピュータが備える表示部、記憶部等)とが協働した具体的手段又は具体的手順によって実現されていると判断できるため、当該データ構造は、ソフトウェアとハードウエア資源とが協働することによって使用目的に応じた特有のコンピュータ(情報処理装置)の動作方法を構築するものと言えます。
すなわち、このデータ構造Bは、プログラムに準ずるデータ構造が規定する情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていますので、自然法則を利用した技術的思想の創作であり、特許法上の「発明」に該当します。