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マイコン型特許

マイコン型特許とは?

「マイコン」は、人間で例えると「頭脳」に相当する部品であり、私たちの身近にある家電、オーディオ、テレビ等のほとんどに搭載されています。

例えば、電子レンジに搭載されたマイコンには、電子レンジの加熱制御等を実現するための制御用プログラム(ソフトウェア)が組み込まれています。

1970年代半ば頃までは、このような制御用プログラムは、特許法の保護対象ではありませんでしたが、1980年始め頃から、制御対象のハードウェアとともに、「マイコン型特許」として保護されるようになりました。

 

特許庁HPより引用

 

IoTの発展により、IoTを構成する主要な部品(IoT主要部品)に注目が集まっています。状況の変化を検知する「センサー」や、センサーやネットワーク等から情報を受け取って様々な制御を行う「マイコン」は、IoT主要部品の一つです。

IoTビジネスをうまく進めていく上でIoT主要部品は、特許法によって、どのような保護を受けることができるのか」を十分に理解しておくことが重要となってきています。

特許事例

 

<特許を取得した権利範囲(請求項1)>

CPUを有し、遊技制御を行う遊技制御手段を備えた遊技台であって、

前記遊技台は、ぱちんこ機またはスロットマシンであり、

前記CPUは、マイクロコンピュータに内蔵され、

前記CPUは、少なくとも特定レジスタを備え、

 前記CPUは、前記特定レジスタに値をセットする機能のうち、ロード命令を受けたことに基づいて行われるものとしては、直値により値をセットする機能のみを有する

ことを特徴とする遊技台。

 

ぱちんこ機やスロットマシン等の遊技台に搭載されるマイコンには、遊技制御を行うための制御用プログラム(ソフトウェア)が組み込まれています。

上記特許は、そのような制御用プログラムに関するものです。

「遊技台(ぱちんこ機またはスロットマシン)がCPUを有すること」、「マイコン(マイクロコンピュータ)がCPUを内蔵していること」、「CPUがレジスタを備えること」は周知の技術ですので、この点に特許性はありません。

したがって、上記特許において特許性が認められたポイントは、

「CPUは、特定レジスタに値をセットする機能のうち、ロード命令を受けたことに基づいて行われるものとしては、直値により値をセットする機能のみを有する」

という技術思想です。

専門的な内容になりますので、ここでは説明を割愛しますが、端的に言えば、

「CPUが、従来に無い特殊な命令を備えたこと」

 に特許性が認められた事例です。

 

仮に、IoTビジネスに用いられるマイコンに、このような特許が存在した場合、特許権侵害に該当するおそれがあり、ビジネスが継続できなくなる可能性があります。

その一方で、IoTビジネスに用いられるマイコンにおいて、このような特許を取得することができれば、IoTビジネスを優位に進めることができる可能性があります。

いずれにしても、IoTビジネスをうまく進めていくためには「IoT主要部品は、特許法によって、どのような保護を受けることができるのか」を十分に理解しておくことが重要なのです。

組込みソフトウェアの製造物責任

製造物責任法(PL法)では、製造物責任の対象となる「製造物」は「製造又は加工された動産」と定義されており(PL法第2条第1項)、「ソフトウェア単体は、動産には該当せず、製造物責任の対象にはならない」というのが立法時の政府の見解です。

しかしながら、私たちの身の回りにあるHDDレコーダ,IP電話,カーナビ,複合機,ゲーム機,テレビ,冷蔵庫等の機器(組込み機器)に組み込まれた制御用プログラム(組み込みソフトウェア)は、機器に組み込まれた状態では動産に該当するため、製造物責任の対象になるものとされています。
(通商産業省産業政策局消費経済課編「製造物責任法の解説」(通商産業調査会、1994年)67頁等)

 

IoTの発展等により、ネットワークに繋がる組込み機器が年々、増加していますが、コンピュータシステムの世界で深刻化しているセキュリティ問題が、近い将来、組込み機器においても深刻化することが予想されます。

IPA「2005年版組込みソフトウェア産業実態調査報告書」によれば、組込み機器の出荷後に生じた不具合の主な原因として、ソフトウェアの問題が34%を占めており、組込みソフトウェアの品質が経営に与える影響が大きくなっていることが分かります。

組込み機器におけるトラブルとしては、例えば、

「携帯機器がウイルスに感染、起動できなくなる」、

「ATM、POS端末等の専用システムが感染し、サービス不能に陥る」、

「ルータの脆弱性が悪用され、コントロールが奪われる」

等の事例が報告されています(IPA「組込みソフトウェアを用いた機器におけるセキュリティ 2006年4月」)

 

経済企画庁国民生活局消費者行政第一課「逐条解説 製造物責任法」では、

「ソフトウェアの不具合が原因でソフトウェアを組み込んだ製造物による事故が発生した場合、ソフトウェアの不具合が当該製造物自体の欠陥と解されることがあり、この場合、その欠陥と損害との間に因果関係が認められるときには、当該製造物の製造業者に本法に基づく損害賠償責任が生ずる」

と記載されています。

すなわち、組込みソフトウェアの不具合に基づいて損害賠償責任が生じる可能性があります。

IoTビジネスにおいてリスクを低減するためには、IoT機器に組み込まれる組込みソフトウェアの製造物責任等についても十分に理解しておくことが重要なのです。

IoT機器の組込みソフトウェアの特許による保護や製造物責任については、専門的な知識や経験が必要になりますので、まずは専門家にご相談ください。

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